SMART目標設定法とは?

定義
SMART目標設定法は、1981年にジョージ・ドラン(George T. Doran)が経営レビュー論文で初めて紹介した目標設定フレームワークです。SMARTはSpecific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字を取った略語で、効果的な目標が備えるべき5つの特性を定義します。
多くの人が「今年は運動を頑張る」「英語の勉強をもっとする」といった漠然とした目標を立てますが、このような目標は実行計画が不明確で達成できたかどうかを判断しにくいです。SMART手法は、このような抽象的な目標を具体的で実行可能な行動計画に変換するツールです。
SMART目標は、個人の自己啓発から企業のプロジェクト管理、チームの成果指標設定まで、あらゆる領域で活用されています。明確な目標はモチベーションを高め、進捗状況を追跡しやすく、達成可能性を大幅に高めます。実際に、目標を具体的に設定した人の達成率は、そうでない人より3〜4倍高いという研究結果があります。
作動原理
SMART目標設定法は、心理学の目標設定理論(Goal Setting Theory)に基づいています。心理学者エドウィン・ロック(Edwin Locke)とゲイリー・レイサム(Gary Latham)は、明確で挑戦的な目標が曖昧で簡単な目標よりも高い成果を引き出すことを証明しました。
各要素の作動原理:
S - Specific(具体的): 目標が具体的であるほど、脳は何をすべきかを明確に理解します。「運動する」よりも「毎週月水金の夜7時にジムで1時間運動する」の方が実行しやすいです。具体性は行動を引き起こすトリガーの役割を果たします。
M - Measurable(測定可能): 測定できれば進捗状況を確認でき、これがモチベーションにつながります。「20kg減量」や「TOEIC 800点」のように数字で表現すれば進展を可視化できます。進展が見えればドーパミンが分泌され、継続して努力できます。
A - Achievable(達成可能): 高すぎる目標は挫折感を与え、低すぎる目標はモチベーションを弱めます。現在の能力よりやや高い 「適度に難しい」目標が最高の成果を生みます。これを心理学では「最適チャレンジレベル」と呼びます。
R - Relevant(関連性がある): 目標が自分の価値観、長期ビジョン、現在の状況と結びついていれば内発的動機が生まれます。「なぜこれをする必要があるのか?」に対する明確な答えがあれば、困難を乗り越える力が生まれます。
T - Time-bound(期限がある): 締め切りは切迫感を作り出し、行動を促進します。パーキンソンの法則によれば、仕事は与えられた時間だけ延びるため、明確な期限がなければ目標は無限に先延ばしされます。
実践方法
1段階: 漠然とした目標の選定
まず達成したいことを自由に書き出します。この段階ではSMARTを適用しません。
例:
- 「健康になりたい」
- 「英語が上手になりたい」
- 「お金をもっと稼ぎたい」
- 「昇進したい」